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『小さな村の物語 イタリア』は、イタリアの紀行・ドキュメンタリー番組です。
BS日テレで土曜日の 18:00~18:54 に放送されています。
筆者は、この番組を新しいかたちの癒し番組として捉えることができると思います。
このコラムでは、この番組の癒しについてご紹介します。
はじめに
この番組では毎回イタリアの田舎の小さな村が選ばれます。
そこに暮らす村人の、気候や風土に合わせて生きる姿がありのままに描かれます。
山地や海辺といった豊かな自然のなかで、家族や友人とともにつつましくもたくましく生きる村人たちの生活が、観るものにやさしい癒しと、じっくりと生き方を見つめる力を与えてくれます。
どんな番組?
ここでは、ひとつの村を見ていきます。
第331回のサウリスという村です。(そう、300回以上もある番組なんです!)
2020年10月から、かつて訪れた村を再訪して、かつての村人が現在どうしているかを描くスタイルになっています。
10年前に訪れた時、元大工のコスタンテさんは、毎日のように息子たちの建築会社の様子を見にやってきていました。仕事を継いだ息子たちはコスタンテの誇りでしたが、唯一孫がいない事だけが不満でした。10年が経ち、そのあいだに息子が結婚し、可愛い2孫娘が生まれました。苦労の多かったコスタンテさんには、孫たちの存在が人生のご褒美だと考えています。
コンスタンテさん
食堂を経営するデルナさんは、明るくお客に接し、食堂は楽しくおしゃべりで盛り上がります。デルナさんのやさしい性格がお客さんを惹きつけるのです。
そんなやさしいデルナさんですが、その陰には深い悲しみがありました。息子のジュゼッペさんを30代の若さで亡くしているのです。息子の墓参りのために村から下に降りることもしばしばでしたが、10年経って体が衰え、それもめっきり減りました。
しかし、寝る前にはロウソクに火をともし、息子の死をいたみます。
そこでエンニオ・モリコーネの楽曲が使われ、デルナさんの悲しみが切々と伝わってきます。
デルナさん
見どころ
このように、イタリアの小さな田舎村の普通の人々の人生の光芒が、ことさら強く主張されることなく淡々と描かれます。
特別でない普通の人の人生のなかに、さまざまな苦楽があり、生きていくことの辛さと、
生きる喜びとが鮮やかに浮かび上がってきます。
番組では、酪農などの農業や漁業に従事するひと、リストランテという食堂を営むひと、アグリツーリズムのホテルを経営するひと、学校教師などなど、華やかではないけれど、地域に根差した暮らしをする人々が出てきます。
とくに北部では冬場は厳しい自然にさらされる暮らしですが、家族や友人とともに力を合わせて乗り越えていく、その力強さに魅せられ癒されます。
番組の公式サイトでは、下記のような紹介がなされています。(以下引用)
”美しく生きるということ…。
気候や風土に逆らわず、共存しながら暮らす。
先人たちが築き守ってきた伝統や文化を誇りに思いながら生きる。
人間本来の暮らしが息づく「小さな村」が今、注目されています。
海を臨む小さな漁村、山肌にはりつくように佇む村、雪に覆われた山間の寒村…。
古き良き歴史と豊穣の大地を持つイタリアで、心豊かに生きる人たち。
〝豊かに暮らす 美しく生きる〟とはどういうことなのか。
私たちが忘れてしまった素敵な物語が、小さな村で静かに息づいていました。
番組ではありのままの時間の流れを追い、
村人たちの普段着の日常を描いていきます。”
おわりに
仰々しくないかたちで、美しく生きるとはどういうことなのかを深く考えさせる、静かに落ち着いた番組です。それでいて、ぜんぜん説教臭くありません。
美しい風景が楽しめるところも、幸せポイントです。
自分の生き方をもう一度見つめなおすことができ、癒しを得られます。
幸せについて考え直すきっかけになるこの番組を、強くおすすめします。
文章:curando